職場におけるハラスメント防止対策
2022/09/21
職場におけるハラスメントは個人としての尊厳や人格を不当に傷つける、行ってはならない行為です。また、これに起因する問題としては、労働者の意欲の低下などによる職場環境の悪化や職場全体の生産性の低下、労働者の健康状態の悪化、休職や退職などにつながり得ること、これらに伴う経営的な損失など様々なものがあります。
職場におけるパワーハラスメントやセクシュアルハラスメント及び妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを防止するために、事業主が雇用管理上講ずべき措置として、主に以下の措置が厚生労働大臣の指針に定められています。
事業主は、これらの措置について必ず講じなければなりません。
事業主が雇用管理上講じなければならない措置
■事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
■相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
■職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
■併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)
※このほか、職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについては、その原因や背景となる要因を解消するための措置が含まれます。
事業主は、日頃から労働者の意識啓発など、ハラスメント防止対策の周知徹底を図るとともに、相談しやすい相談窓口となっているかを点検するなど職場環境に対するチェックを行い、特に未然の防止対策を十分に講じるようにしましょう。
~取り組みにあたり対策のポイントをご紹介します~
1.職場におけるハラスメントの内容及び職場におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針等を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること
対策ポイント
■就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に、事業主の方針を規定し、当該規定と併せて、ハラスメントの内容及びハラスメントの発生の原因や背景等を労働者に周知・啓発。
■社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等にハラスメントの内容及びハラスメントの発生の原因や背景並びに事業主の方針を記載し、配付等。
2.行為者への厳正な対処方針、内容の規定化と周知・啓発
職場におけるハラスメントに係る言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を、就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
対策ポイント
■就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に、ハラスメントに係る言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発する。
■ハラスメントに係る言動を行った者は現行の就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、それを労働者に周知・啓発する。
3.相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備 相談窓口の設置
相談への対応のための窓口(相談窓口)をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
対策ポイント
■相談に対応する担当者をあらかじめ定める。
■相談に対応するための制度を設ける。
■外部の機関に相談への対応を委託する。
4.相談に対する適切な対応
相談窓口においては、被害を受けた労働者が萎縮して相談を躊躇する例もあること等も踏まえ、相談者の心身の状況や言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、ハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、ハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応すること。
※言動を直接受けた労働者だけでなく、それを把握した周囲の労働者からの相談も含まれます。
対策ポイント
■相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとする。
■相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。
■相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと。
5.事実関係の迅速かつ適切な対応
事実関係を迅速かつ正確に確認すること。(セクシュアルハラスメントの場合には、必要に応じて、他の事業主に事実関係の確認に協力を求めることも含まれます。)※協力を求められた事業主には、これに応じる努力義務があります。
対策ポイント
■相談窓口の担当者、人事部門又は専門の委員会等が、相談者及び行為者の双方から事実関係を確認すること。その際、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも適切に配慮すること。
また、相談者と行為者の間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講じること。
6.被害者に対する適正な配慮の措置の実施
職場におけるハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。
対策ポイント
■パワーハラスメント、セクシュアルハラスメントの被害者への対応を行う場合事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講じること。
7.行為者に対する適正な措置の実施
対策ポイント
■就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書における職場におけるハラスメントに関する規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講じ、併せて事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪等の措置を行うこと。
8.再発防止措置の実施
改めて職場におけるハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。セクシュアルハラスメントの場合には、必要に応じて、他の事業主に再発防止に向けた措置に協力を求めることも含まれます。
なお、職場におけるハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講じること。
対策ポイント
■職場におけるハラスメントを行ってはならない旨の事業主の方針及び職場におけるハラスメントに係る言動を行った者について厳正に対処する旨の方針、妊娠・出産や育児や介護に関する制度が利用できる旨妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの被害者への対応を行う場合)を、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に改めて掲載し、配付等すること。
■労働者に対して職場におけるハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施すること。
9.当事者などのプライバシー保護のための措置の実施と周知
職場におけるハラスメントに関する相談者・行為者等の情報はその相談者・行為者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又はそのハラスメントに関する事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。
なお、このプライバシーには、性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含まれること。
10.相談、協力等を理由に不利益な取扱いをされない旨の定めと周知・啓発
労働者が職場におけるハラスメントに関し、事業主に対して相談をしたことや、事実関係の確認等の事業主の雇用管理上行うべき措置に協力したこと、都道府県労働局に対して相談、紛争解決援助の求め、調停の申請を行ったこと又は都道府県労働局からの調停会議への出頭の求めに応じたことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
11.業務体制の整備など、事業主や妊娠等した労働者等の実情に応じた必要な措置
妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの発生の原因や背景となる要因を解消するため、業務体制の整備など、事業主や妊娠等した労働者その他の労働者の実情に応じ、必要な措置を講じること。
対策ポイント
■妊娠等した労働者の周囲の労働者への業務の偏りを軽減するよう、適切に業務分担の見直しを行うこと。
■業務の点検を行い、業務の効率化などを行うこと。
職場におけるハラスメントの防止のための望ましい取り組み
⑴各種ハラスメントの一元的な相談体制の整備
⑵職場におけるハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための取り組み
⑶労働者や労働組合等の参画
また、事業主及び労働者は、ハラスメントの防止のための自らの責務をしっかりと認識しつつ、ハラスメントのない職場をつくっていきましょう。
【事業主の責務】
1)職場におけるハラスメントを行ってはならないことその他職場におけるハラスメントに起因する問題に対する自社の労働者の関心と理解を深めること
2)自社の労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修その他の必要な配慮をすること
3)事業主自身(法人の場合はその役員)が、ハラスメント問題に関する理解と関心を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うこと
【労働者の責務】
1)ハラスメント問題に関する理解と関心を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うこと
2)事業主の講ずる雇用管理上の措置に協力すること