『承認』についてのまとめ その③<最終回>
2022/03/23
承認についてのまとめの最終回です。
社員や部下がやる気を高める褒め方とはどのような褒め方でしょうか。
前週の続きとなる、「褒めても効果が上がらない場合について」の後にまとめています。
褒めても効果が上がらない場合について
① 統制の手段と受け取られる時
上司対部下、教師対生徒、親対子のような上下関係で、
仮に上司から、
「君はいつも私のピンチを救ってくれるね」とか、
「君は誠実な人間だから、絶対に私を裏切るようなことはしないと信じているよ」
と言われれば、部下はこれからもそうする以外に選択の余地がなく、
部下にとっては、厳命されるよりもむしろ重く心にのしかかる場合があります。
同様に、例えば親しい同僚に、
「上の人に対しても堂々とものが言えるあなたの態度にはしびれる」とか、
部下に「課長の優しいところが大好き」などと言われたら、
いずれの場合も最初は褒められた、信頼されたと言う満足感が強いのですが、
徐々に被統制感へと変わってゆき、仕事や活動そのものの魅力を奪ってしまいます。
② 褒める側の思惑が背後にあり、その魂胆が見え透いている時
作為的な褒め方は、人間に対する一種の操りであり、
褒める側と褒められる側の信頼関係を根底から破壊してしまいかねません。
③ ”褒めると安心して休み出す”タイプの場合
”褒めるとやる気を出す”タイプと、”褒めると安心して休みだす”タイプの人がいます。
これは組織や仕事に対してコミットしているか、
ただ打算的、手段的に関わっているだけなのかの違いです。
仕事を通して認められたい、自分を成長させたいという思いが強いものは、
褒められるとやる気を出しますが、
仕事はお金のための手段と割り切り、
できるだけ少ない時間と労力で最低限の給料をもらえればよいと思っているものにとって、
褒められれば給料に見合う仕事をした、というサインをもらったことになり、
これ以上頑張らなくてよいことになるのです。
そこで、やる気を高める褒め方についてお話しします。
有能感や自己効力感を最大限に与えながら、
被統制感を最小限に抑えるような褒め方が理想です。
そのためには褒める側の主観や強制力をできる限り排除し、
客観的な情報に基づいて褒めなければいけません。
褒められたことがきっかけでモチベーションが上がったというケースを振り返ってみると、
そこには共通点がみられます。
それは、具体的、客観的な事実に基づいて褒められている点です。
例えば外資系小売業のケースでは、
社員同士が具体的なよいところを見つけてカードに書き、手渡しているし、
「要注意人物」の烙印を押された社員が、
トップクラスの業績を上げる社員に生まれ変わったと言うケースも、
上司は取引先での評判と言う情報を伝えながら褒めました。
その他、営業なら来店者数や商談回数の伸び、
製造なら不良品の減少と言った数字、また顧客からのクレームを上手に処理した、
トラブルの種を未然に発見したと言うような具体的貢献、
などに注目して褒めると言う方法もあります。
このような事実に基づいた褒め方なら、被統制感は与えにくいし、
有能感、自己効力感を高めることができます。
もちろん部下がいつでも成功し、期待通りの成果を上げるとは限りません。
しかし、その場合でも、良かった点や以前より力が伸びた部分を褒めるとともに、
どうすれば成功するか、目標を達成できるかを具体的に助言することで、
モチベーションを低下させないばかりか、
場合によっては成功したときよりも、大きなモチベーションを引き出すことができるでしょう。